ヴィーガンはヤバい奴しかいないのか

30歳で有機農家を志して10年。流れに身を委ねていると、気がついたら、40歳のなっこは、ヴィーガンになっていました。

そもそもヴィーガンって何?

ヴィーガンとは、ざっくりいうと、人間の目的のために動物を利用する権利はないと信じて行動している人たちです。1951年に、イギリスのヴィーガン協会が定義した「人間は動物の搾取なしで生きるべきであるとする主義」が世界に広まったとされています。

ベジタリアンと何が違うの?

ベジタリアン、菜食主義者といった人たちが、ダイエットや健康志向など自分の身体と食にのみ関心があるのに対して、ヴィーガンは人類の生き方やあり方そのものを起点として考察し、現状の世界を観察した結果としてベジタリアン、菜食主義者と同じような食生活になっています。

どんなヴィーガンがいるの?

ヴィーガンといっても多種多様です。10人ヴィーガンがいたら、10人それぞれのヴィーガンとしての考え方、生き方があります。

ライト級ヴィーガン

  • 肉や魚、乳製品、卵などの動物性食品を一切食べない
  • このレベルでも大多数の人からは極度の変人、あるいはめんどくさい人認定される

ミドル級ヴィーガン

  • 上記に加えて、レザーや羽毛のような動物由来の製品も消費しない

ヘビー級ヴィーガン

  • いかなる方法による動物からの搾取、および動物への残虐な行為の排斥に努める哲学と生き方を実践している

狂信者ヴィーガン

  • 正義と使命感から他者を変えようとしてくる

過激派ヴィーガン

  • 農場に突撃して牛を逃がしたりする

ヴィーガン神

  • 人類が救済されるには、人類がヴィーガンになるべきだと信じている
  • 1000年後に、本当に人類の信仰対象になっている可能性はなくはない

なっこはライト級ヴィーガン

なっこは、分類するとすればライト級ヴィーガンであろうと思います。動物性の食べ物を食さないことに加えて、アルコール、カフェイン、砂糖が含有している食べ物、飲み物も避けています。玄米4合と味噌と少しの野菜と果物と水と白湯、雨ニモマケズのデクノボーの様な食です。

しかしこれは、平和な日本で、国家に守られ、資本主義と民主主義の恩恵で衣食住が満ち足りていて、結婚生活も上手くいっているからこそ実践できるだけで、有事の際は、とにかく今日を生きるために何でも食べるだろうし、何でも飲むと思います。

ちなみに妻は何でも食べます。なっこは好き嫌いの極致のような食の嗜好です。お互いの違いを尊重し、それでも楽しい食を共有できていることに感謝しています。

ヴィーガンになったきっかけ

「よし、今日からヴィーガンになろう」と主体的に思い立ってヴィーガンになったわけではありません。また、なっこは他人を変えようとする人や集団が非常に苦手であり、誰かに言われて受動的にヴィーガンになったわけでもありません。

なんか中年太りしてきたから、痩せないとなと思い立ち、20代の頃、禁煙セラピーという本を読んで禁煙できたことを脳は連想し、その著者さんがダイエットセラピーという本も書いてることもさらに連想し、試しに読んでみようと行動した結果、気がついたら2023年時点の世界でヴィーガンに分類されていたが、きっかけといえばきっかけであろうかと思います。

そもそも著者さんのアレン・カー氏は、1936年生まれのイギリス人で、ダイエットセラピーの出版当時は、ヴィーガンという言葉も今ほど世界に浸透していなかったことでしょう。彼のセラピーが文化や時代の違いを超えて効果があるのは、行為そのものの本質を解き明かし、その上で、選択を読者に委ねているからだと思います。

ヴィーガンはヤバい奴しかいないのか

ヤバい奴しかいないと思います。

往々にしてヤバい奴は、自分のことを世界で唯一まともな人間くらいに思っています。なっこも、わたしは分類上はヴィーガンではあるだろうが、それを他人に勧めないし、行動を伴う布教活動や、テロリズムと大差ない過激な行動に出ることもしません。ヴィーガンの集団に属したいとも、世界を変えようとも、変えられるとも思いません。ヴィーガンの中で、唯一まともなヴィーガンであると思っているわたしは、離見で見てみますと、間違いなくヤバい奴であろうと思います。

100%正しい、正義は我にありと武装し、人類のため、地球のためと、考え方の違う個人や集団に突撃する人たちがいます。正義が敵を作りだすことに見て見ぬふりをし、デモ、集会、シンポジウムという名の戦争で、人生のエネルギーと時間を消費する人たちです。

なっこは彼らが苦手です。なぜなら、人間は、違う考え方を持っていて当たり前だし、人を変えることは出来ないと思うからです。みんなが正しいという有機農業を手放し、有機農業界からかなりの距離を置くことができたのは、そういった人たちの存在のおかげです。有機農業は自然と共存共栄するから自然の生き物を敵対視してはいけないと説く彼らが、違う考えで行動している人間や集団を敵対視していることは、やはり納得できませんでした。30歳の情熱以外何もないなっこにきっかけを与え、気づきを与えてくれたこと。そういった意味では、感謝しております。

また、ヴィーガンだと周囲に公言せず、ヴィーガンの集団や界隈に近づこうと思わないのは、集団とは玉石混合であり、一部は必ず妄信し、暴走することを身をもって学んだからです。

なっこは、宇宙はいつか終わるだろうし、地球もいつか終わる、であるなら地球上のすべての種はいつか必ず滅びるし、人類も滅びると思っています。

滅びは種の最後の形態なだけで、良いも悪いもないです。爆発的に増えた種が、その後一気に絶滅あるいは絶滅寸前まで行くのは、自然の摂理です。また、人間のやることもすべて自然の一部だと思いますので、大いなる流れに抗おうとする小さな笹船たる、正義の行動と人間同士のイデオロギー闘争、資源の奪い合いの戦争もまた、自然なのでしょう。

であるなら、なっこは、自分がコントロールできることに集中しようと思います。朝目覚めて、身体がどこも痛くないことに感謝し、今日一日、じぶんに親切にし、好きなことをやり、妻に親切にし、妻を楽しませ、さらに余裕があれば、周囲の生き物を大切にし、眠たくなったら寝ることにします。

ヴィーガンになるというのは、30代に試行錯誤した最後のピースであり、また、40代の起点となってくれていると思います。