家事は兵站である

兵站(へいたん)とは、軍事学の用語で、補給・輸送・管理といった要素を含む軍事業務を指します。実際の戦争においては、最前線で戦う兵士や部隊が、軍事的な機能を保持し続けるための後方支援全般を兵站と呼びます。例えば、弾薬や食料を補給したり、負傷兵を後方へ輸送したり、部隊が休むための施設の構築や維持をしたりします。

結婚生活において、家事は兵站です。ですので、性別問わず、サラリーマンをしている家族メンバーに、家事は少しでもさせるべきではないです。

サラリーマンは兵士

1945年8月14日以来、日本国が敗戦してもなお主権国家として存在し、他国に侵略されず、通貨円が価値を持ち、国内の治安が安定しているのは、すべてのサラリーマンが、ありふれた日常の維持に必要な仕事を、日々黙々と積み重ねていてくれるからです。

サラリーマンとは、言われたことをやる作業員です。そもそも、人間は言われたことをやるのって、地獄の苦しみなんですよ。しかも、過労で死んだり、職場の人間関係に悩んで精神を病んだり、与えられた権限を個人的な欲に使えば、社会的に抹殺されたりします。それに加えて、彼らは個であることを自主的に制限したり、周囲から制限され続けます。なぜなら、個よりも、集団が機能することが優先される会社という組織は、和を乱す個は徹底的に排斥されるからです。

サラリーマンは平和を守る兵士で、兵士の仕事は言われたことをやる連続ですから、今日一日をなんとか死なないで終えることで精一杯です。そして週末の束の間の休息を目標に週を乗り切ることで精一杯です。そんな一週間のループは、気がつくと5年10年があっという間に過ぎ去っています。

サラリーマンに家事をやらせると死ぬ

そんなサラリーマンは、家事もやる時代となってしまいました。兵士は、戦う時間以外は、休ませてあげないと死んでしまうんですね。それと同じで、サラリーマンは、働く以外の時間は休ませてあげないと死んでしまうんです。間違っても、風呂掃除をやらせたり、ゴミ出しをやらせたり、休日寝てたり、ゴロゴロしていることを咎めたりしてはいけないんです。

我が家では、なっこは個人事業主で、妻は地方公務員として働いています。なっこは事業主ですから、自分で決めたことだけやっていればいいので、これは極楽の仕事です。一方妻は、言われたことやらなくてはいけない仕事で、しかも週に5日も決まった時間に出勤しなくてはいけないという、なっこのような社会生活不適合者からすると、ありえない最前線で生きております。

結婚生活は、ワンチームとして個よりもよい生活がお互いに享受できている場合においてのみ、上手くいっているといえますから、妻がサラリーマンの我が家は、なっこが家事のすべて、すなわち、妻の仕事の後方支援を担っているわけです。これは、夫婦が生き残る最適解です。

妻は毎日へとへとでしょうから、休息地である家は掃除が行き届いており、座っていればご飯が出現し、お風呂は沸いており、寝る前はフットマッサージも提供します。そもそも、家事をゲーム感覚で、いかに効率よく、少ない時間で最大の効果を得るためのブレイクスルーを発見することに快感を見出しているなっこにとって、家事はやっていて楽しい仕事で、しかも全部自分で決めてやっていますから、そこにストレスもなにもないのです。

パワーカップルというカモ

良い大学を出て、大手企業に就職し、妻と夫がサラリーマンという夫婦を、パワーカップルというそうです。彼らの狭い世界では、彼らは勝ち組なのでしょうが、言われたことをやるサラリーマンに加えて、家事も育児も分担しなければならない彼らの日常は、何をしても、何もしなくてもいい余剰時間はほとんどありません。結婚・妊娠・出産・子育て・介護・自らの老後といった、どうなるか分からない人生の一切すべては、彼らの都合の良いスケジュール通り進まなくてはならず、どちらかが病気になったり、職を失えば、彼らは一瞬で、彼らの価値観で言う負け組になります。

お互いを連帯保証人とするわけのわからないローンを組んでタワマンを買い、またまたローンでそれなりに他人を威圧できる車を買い、もう旅行に行けるお金はなく、日々の食費を切り詰めはじめるという、健康という一番の資産をないがしろにしはじめます。

物持ちは金持ちではないと学校で教えてもらっていないので、本質的なところで間違っていることに気がつかず、また立ち止まって深く考える時間は、仕事と家事と借金の返済に追われる日々に存在せず、電車の中吊り広告などで、ワンルームマンション投資などを見ると、それに飛びついてしまうわけです。

あらゆる方面でカモられ続け、彼らの思う通りに何一つならず、しかしそれでも、子供には、良い大学に行ってよい会社に就職しなさいと言い続けます。

哀れな自称勝ち組人生は、世代を越えて継続されていきます。そんな彼らの優越感と叶わない夢と狂気の同調圧力は、日本国が日本国たるための一番過酷な最前線で、死の舞を踊り続けるのです。

家事は兵站

家事は兵站であるから、サラリーマン以外の人がやりましょう。どちらもサラリーマンであるなら、どちらかが、収入が青天井でしかも時間を売らなくてもよい個人事業主になりましょう。

さもなくば、言われたことだけをやる借金返済の地獄の日々が、あなたの家庭には出現してしまいます。家庭に安らぎは無く、借金に追われ、日曜日の午前中になにもせず夫婦でだらだら寝ているという、極上の時間は消し飛びます。